17歳の遺書
ガラガラとドアを開ける。


振り返るときになびく長い髪。
パッチリとした目。長く伏せたまつ毛。




『おかえり。どこいってたの?トイレ??体調悪かったの?』



透き通った綺麗な声だ。
俺の1番好きな声で聞いてくる。


だめだ、我慢出来ない。
スタスタと歩き、無言で美帆を抱きしめる。からだから吸い取られたぬくもりを感じるように。


近づくとシャンプーのいい香りがする。

『どうしたの?今日いつもと違うじゃん。』といってちいさく笑う美帆が愛おしい。

『なんにもないけど、ただ抱きしめたくなっただけ。』
美帆から体をはなす。






....殺風景だった部屋も白い天井もつまらなかった日々も全部君色に染まっていく
世界が色づいて、きゅうに華やかになる。




そんな世界とはうらはらに、俺の心は黒い闇に飲み込まれていく。




俺、今日手術受けるって決めたんだ。
心の中で何度も唱えた。
それでも言えない。だって絶対に悲しませることになるから。
涙なんて見たくない。


もう何度美帆を泣かしたのだろう。


だけど、美帆は絶対に俺の前では泣かない。
見たことないから。それでもきっと泣いている。心を殺して、声を殺して。
心の奥深くで泣いているのだろう。




そしてまた思う。








俺はなんてなさけないのだろう。
大切な人が泣いているのに、その涙も拭ってあげられない。俺はなんのためにいるのだろう。




考えても考えても見つからない答えを置いて美帆を見る。



『どうしたの、今日なんか素直だね。ほら、勉強しようよ。』

そうだ、勉強しなきゃ。
昔は大嫌いだったのに、あの時から変わった。今は、、、大好きだ。















この時間が、、この空間が。






そして俺は今日、手術をうけると決めた。

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