17歳の遺書

感謝。


体育祭最後の競技とあって、さっきとはまた別の緊張感が漂っている。



どの子もやっぱり輝いていて、
いーなー。と思うばかりだった。





手を取り合って喜んだり、
涙を流す仲間を励ましたり、まるでドラマの中のようなワンシーンに、
胸を打たれる。




泥でくちゃくちゃになった人も、今ならなんでもかっこよく見えた。




俺は自分のまっさらな体操服をみる。
こんな体操服の人は誰もいなくて恥ずかしい。




べちゃ、と泥をつけてみるけど、不自然で仕方ない。



ゴロンと寝転がる。
いい感じに砂がついて、汚くなった、
いつもはうっとおしいと思う、土も、
輝くための物だと思うと、きらきら光って見える。





目の前に広がる空に雲は一つもなくて、
やっぱり体育祭を応援している。





突然美帆の顔がまじかに広がる。

『どうしたの?やっぱ体調わるいの?』








『全然、絶好調だわ。』
俺は起き上がりながら答える。




『ならいーけど、絶対無理しちゃダメだよ。』


そういって笑い、俺の隣に座る美帆。

久しぶりにみた横顔が可愛すぎて、愛しすぎて肩をよせる。





しばらくしてから急に立ち上がる美帆。





『次、二年生だから行かなきゃ。
とびきり近くで見てて!行こっ!!』




と俺の手を引きどこかへ歩く美帆。





美帆につれてこられたそこは、来賓の方や、市長が座っている席の辺りで.....





「なんでここなの?」
と俺は小声で尋ねる。




今日の美帆には小声なんていう手段はないみたいで、
『だって一番見えるし、いーじゃん。』




『まぁ、そうだけど....』





『でしょー、ちゃんと見ててね!いってくるー!!』


と言って手を振りながら走っていく美帆。



今度はしっかり見える後ろ姿に、
『いってらっしゃいー!頑張れ。』
と声をかける。





俺にできないことを、俺ができないことを、精いっぱい楽しんで。
頑張れ、美帆。頑張れ。

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