SAYURI
「大治君って頭いいね」
「信子の方が頭いいよ、僕数学しか出来ないし」
図書室での勉強会。
それが信子の最近の日課になっていた。
下校時間までの大治と過ごす時間は幸せだった。
「もうすぐ・・・帰らなきゃね」
信子が少し淋しそうに言うと大治は笑って「明日もここで待ってるよ」と言った。
"明日も"その言葉が信子にとって生きる希望になっていた。
クラス中からシカトされ、信子に話しかける者などいなかった。
でも、大治だけは信子に優しく接してくれた。
信子が大治を好きになるのにそう時間はかからなかった。
この幸せがずっと続けばいいのに、そう思っていた時。
信子の元にあの手紙が送られて来た。
そして信子は知ることになる、大治のもう一つの顔を。