方言男子に恋をした
「私なんかに使って良かったんですか?」


素朴な疑問だった。
だってさ、初対面なわけよ?
しかも一夜限りのことって私でも分かっていたし。

賢い彼なら当然分かっていたはずだ。

なのに、あんな高級ホテルの招待券を私なんかに使うなんて。

メールを見る限り有効期限はなさそうだったし…ならば、私より彼の好みに合う人と行けばいいのに。

何故私だったのよ?

…なんて言っていると悲観的にしか聞こえないが、そうではなくただ疑問に思ったのだ。


「招待券を、ってことですか?」

「ええ」


頷くと佐久間は「そうですねー…」と呟いた。
そしてこちらをじっと見つめた。

その、真っ直ぐな瞳に心臓はうるさく音を立てる。


「…思ったからです。あなたとなら、使ってもいいかと」

「…は?」


な、何よ何よ?
あなたとなら使ってもいいか、ですって?

…は⁉

脳内でパニックを起こした私は、ただフリーズするだけ。

少し上から目線だったのは置いておいて…あんなじっと見つめられて、あんなことを言われたら。

誰でもフリーズはするものだ。


「顔真っ赤ですよ?」


クスクスといった笑い声が聞こえそうだ。
そんな佐久間に私は上手く反論出来るわけもなく。


「し、仕方ないでしょう!」
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