方言男子に恋をした
「いいと思いますよ?質問も問題ないでしょうしね。常務が答えないなら、私が何とかしますから」


綺麗な笑顔を見せてくれる清水さん。

その笑顔が佐久間に似ているような気がするのは私だけだろう。


「そ、それはありがとうございます」

「いえいえ。では、日程のほうを考えましょうか」


そう言いながら清水さんが無駄のない動きでスケジュール帳を取り出す。

私もそうだそうだと取り出そうとした時。


「あ、いたいた」


ガチャッと扉が開いたかと思えば、一人の男性が颯爽と入ってきた。

誰かと勢いよく振り返ると、そこには紺の細身スーツを身につけた今野常務が爽やかな笑顔で立っていた。


「こ、今野常務⁉」


え、今日は今野常務無しで打ち合わせじゃないの?
もしかして私が聞き忘れてた⁉

突然の今野常務登場に私の頭はプチパニック状態だが、秘書である清水さんはというと。


「何か御用ですか」


冷静な顔で今野常務を見つめている。
まるで、今野常務の登場が事前に分かっていたかのよう。

秘書にでもなると、こういうことは日常茶飯事なんだろうか…?


「対談の打ち合わせでしょ?暇だからきた」

「13時半からの打ち合わせがありましたよね?」

「16時に変更になったよ」

「では他の仕事をしてください」

「終わったよ」


目の前では今野常務と清水さんが、お互い動揺することもなく会話を続けている。
そんな中、取り残された感がマックスな私はというと、黙ってその会話の行く末を見守ることしか出来なかった。

…私邪魔?
いや、普通に考えたら今野常務が邪魔ということになるんだけど。
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