大好きな君へ。
 又オニギリを女将さんにお願いして、三日目の巡礼へと出発した。
何故だか解らないけど、シルバーウィーク前の天候が嘘のように晴れの日が続いていた。


昨日行けなかった十二番野坂寺。
二十六番札所に近いことから一緒に回ろうとしたけれど、観光案内所が開く時間までが勿体ないからってことだった。


ホントだな。
八時に納経所が開くのになんで自転車を貸してくれる観光案内所が九時からなんだろう?

隼の言う通り、巡礼者を軽くみているとしか考えられなかった。


宿から比較的近いと言うこともあり、其処から回ることにしたのだった。


札所十二番は花の寺だと聞く。
蹲の中には蓮が咲いていた。


山門には閻魔様と阿修羅像。
これがそうなのかは解らないけど、苦痛に満ちた顔が三つあった。


「おん、あろりきゃ、そわか」
山門に挨拶をしてから中に入り、聖観音様のご真言を唱えた。




 野坂寺で納経などを済ませてから、又レンタサイクルを借りた。

隼は相変わらず七段ギアだ。
私が幾ら電動アシスト自転車の方が楽だからと勧めても聞く耳さえ持ち合わせていないようだった。


隼は代金のことを考えていたのだった。
電動アシスト自転車は普通の自転車の倍だったからだった。




 西部秩父駅前から北方面へ向かう。
秩父市役所の駐車場の脇を通り抜け、交差点を左に曲がると線路があった。


線路を越えて左にみえるのが初日に降りた御花畑駅だった。


その道を真っ直ぐに行くと、信号があった。
その先は昨日見た今宮神社だった。


私は又此処により、購入したペットボトルに龍神水を汲んだ。

元来た道を上がり、信号を左に折れる。

その道は本町交差点で国道299と繋がっていた。


其処を右に折れると左に側に秩父神社がある。
国道299は札所九番入口などを通り、曼珠沙華で有名な日高市の巾着田へに向かう車で特にこの時期は混雑が予想されているようだ。




 その交差点を真っ直ぐに行くと相生町と書かれた二股交差点があった。


左の道を行くと、秩父橋の信号があった。


「どうする?」


「寄ってみる?」

二人は暗黙のうちに旧秩父方面へと向かった。




 そして一気に旧秩父橋入口までペダルを漕いだ。


自転車を押しながら旧秩父橋を渡る。


その橋の下には橋桁だけ残されていた。


秩父橋と旧秩父橋。
二つを見比べながらその下を見る。

その川原は断崖絶壁へと繋がっていた。



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