大好きな君へ。
 十三仏の案内板があったので足を延ばしてみることにした。


丁度その時脇の家の方が車で上ってきた。


「すいません。小鹿坂峠はバイクで越えられますか?」


(隼、もしかしたらバイクで来る気なの?)

そう私には、次はバイクで来たいと言っているように聞こえたのだ。

でも残念ながら其処はバイクでは無理だと言うことだった。


秩父困民党が越えて来た小鹿坂峠は、今もなお厳しい道なのだろうと思った。




 納経所で御朱印いただいた後、幾つつかのカーブを越えて秩父公園橋へと向かう信号に出ていた。


その交差点を右に行く。


二十四番法泉寺。
左久良橋を越えて更に行った場所にあった。


駐車場の反対側にお休み処を備えた売店があった。
私達はその奥のスペースに自転車を置かせてもらうことにした。


百十七段ある急な階段を数えながら一気に昇る。
山門に一礼してから下を見て、札所十一番を思い出した。


「やれば出来るね」
思わず私は言った。
でも隼は何が何だか解らないようで、盛んに首を傾げていた。




 「おん、あろりきゃ、そわか」
聖観音のご真言だった。


観音堂は木立に囲まれており、其処を渡ってくる風が心地良かった。


納経を済ませ、同じ階段を又数えながら降りる。
すると百十六段になっていた。
階段と言う物は上段は数えないそうで、正式な数は百十六段だと言うことだそうだ。




 二十五番久昌寺は巴橋の信号を右に折れた坂の上にあった。
駐車場に自転車を止め、朱塗りの仁王門それぞれに一礼する。
その先の坂の上にこじんまりとした本堂があった。


「おん、あろりきゃ、そわか」
此処も聖観音のご真言だった。


納経場まではかなりの道程がある。
でも其処は沼の脇にあり色々の花を愛でながら歩けるので人気のある札所だそうだ。


納経所の傍には曼珠沙華が咲いていた。
更に奥に沼があり、古代蓮が咲いていた。


納経を済ませてから其処へと行ってみることにした。




 此処でタイムアップだった。
時計を見ると、四時近くになっていたのだ。


「もう返しに行かないといけないね」


「えっ、もうそんな時間?」


「確か五時までに自転車を返さなければいけないんだったわね? だったら早く行きましょうよ」
私は立ち上がった。




 夜テレビを見た。
札所十七番で聞いたあの花実写版だ。


「あれっ、あの札所とは違うね」
ポツンと隼が言った。




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