大好きな君へ。
 「この先にあった公園覚えてる?」


「あぁ、覚えているよ。砂場の砂が堅くてトンネルが作れなかってことは」


「私が隼お兄ちゃんに遊んでもらいたくて、ブランコの柵を越えたら。頭に当たって……」


「えっ、あれ優香だったっけ?」


「そうよ。私よ。本当に悪いのは私なのに……叔父さん怒られていたわよね」


「確か、最後に土下座させられてた」


「ママね、本当に悪いのは自分だと判っていたの。だっておしゃべりに夢中で、私のこと放ったらかしていたからね」


「叔父もそのことは周りの人から言われたらしいよ。でも、ぶつけたのは隼だからって」


「ママもあの後反省してね、何時も傍にいるようになったな。でも迷惑だった」


「どうして?」


「そりゃそうよ。大好……」

私は告白しようとしていたに気付いて、慌てて口を閉ざした。


「ん? 今何か言った?」


「ううん、何も言ってない」

まともに隼お兄ちゃんを見られなくなった私は太鼓橋を渡り始めた。


「隼お兄ちゃんありがとう。もうすぐだから一人で大丈夫」

私はそう言いながらも、本当は隼お兄ちゃんが追い掛けて来てくれることを期待していた。




 母は示しが着かなくなったのか、私から隼お兄ちゃんを遠退けた。
私は大好きな隼お兄ちゃんと一緒に通えなくなった事実を、私への罰だと思っていたのだ。


私は又隼お兄ちゃんが独りぼっちで保育園の前で待たされていることが堪らなかった。
私のせいで悲しい思いをさせていることに小さな胸を痛めていたのだった。




 アパートの反対側にあった隼お兄ちゃんと良く遊んだ公園は無くなり、集会場に姿を変えていた。


私は思い出の場所が無くなってしまったことに改めて寂しさを感じていたんだ。

まさか……
そんな時に再会するなんて思いもよらなかった。
でも私は隼お兄ちゃんだと気付かなかった。あんなに隼お兄ちゃんが大好きだったのに……




 「公園無くなったんだね」

しんみりしていたら突然声がした。

慌てて振り返ると、隼お兄ちゃんが其処にいた。


その途端、心臓が跳ね上がった。




< 21 / 194 >

この作品をシェア

pagetop