大好きな君へ。
 「隼お兄ちゃん……」

それでも気付かれないように冷静を装った。


「あの優香……、悪いけど、その隼お兄ちゃんっての辞めてくれる。何だか恥ずかしいよ」


「それじゃ何て言えばいいの?」


「そうだね。うーん、隼がいいな」


「そんなー、呼び捨てなんて」


「ゆうかが言っていたから、その方が嬉しい」


「えっ、私言ったことあった?」


「えっ、うわ……」

私の一言で、隼お兄ちゃんが固まった。




 「隼お兄ちゃんどうかした?」


「ううん何でもない。あの優香、本当に此処で良いの?」


「うん、大丈夫。だってあれが私の家だもん」
私はそう言いながら、集会場の後ろにある家を指差した。


「オンボロアパートの目と鼻の先か? 又、随分近い場所に引っ越ししたな」

隼お兄ちゃんは笑いながら言った。


「悪いけど優香、それじゃそろそろ帰るね」


「隼お兄ちゃん、ありがとうございました」


「優香……思いっきり隼って言っちまいな」


「あっ。う、うん。じゃあ……隼。やっぱり恥ずかしいよ」

私の体温はきっと上がっていることだろう。
だって顔がこんなに熱い。

隼お兄……じゃあなくて隼にバレなきゃいいな。




 「ごめんね優香」
隼は何故か涙声だった。


「じゃあ又ね」

隼はバイクに股がり私の横を真っ直ぐ通り抜けた。


(あっ、住んでいる場所聞き逃した)

私は慌ててバイクを追い掛けた。




 サイドミラーで私を見つけたのだろうか? バイクは交差点の向こう側で止まってくれた。


「ごめん、ヘルメットそのままだったね」

隼は笑っていた。
私は頭に手をやって、その事実を確認した。


顔が火照る。
私は恥ずかしくなって俯いた。


「ごめんね。黒いキャップだったから違和感無くて……。そのゴーグルで気付いたんだ。ねえ、どうせならこのまま僕の家に行く?」

隼はそう言った。


「えっ!? 行ってもいいの?」
私は思わず歓喜の声を上げた。


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