大好きな君へ。
 現場検証は難航を極めた。
斜面が滑りやすい上に、もし証拠があったとしても草むらに隠れてしまうからだ。

その上管理業者が定期的に草を刈っていたら、それらと一緒に処分されてしまった可能性もあったのだ。


又、その場所は通りすがりにゴミを投げ捨てて行く人もいたから、どれが犯人の物かは特定しづらかったのだ。


二年前の事件ってことで新しいのはゴミ袋に分別された。
その上で、出てきた証拠を振り分けたのだった。




 捜査員は全員、現場を荒らさないように袋状の物で靴を覆っていた。


犯人を特定出来る物などそう簡単に見つけ出せるものではない。
それでも警察は頑張っていた。




 線路に降りるための階段の下で何かを見つけたらしく慌ただしくなってきた。

それをビニール袋に入れて、すぐに鑑識に提出したようだった。


それは其処にあってはならない物だったようだ。


其処で見つかった証拠は、結夏さんを死に至らしめた人物の棄てた物だったようだ。




 階段の近くから風化したティッシュの塊が発見された。
中を開いてみたら、使用済みのスキンが出てきたのだ。


すぐにDNA鑑定が行われた。


その結果解った犯人は以外な人物だった。

それには隼の親友松田孔明さんのお兄さんの体液が付着していたのだった。


あの日見つかったのは使用済みスキンはストーカーの物ではなかったのだ。


何故二年もの間雨風に晒されながらもティッシュの塊がほぼ原型を留めていたのかは解らない。

偶然、そのティッシュペーパーが階段の下に落ちたようだ。
雑草狩りや掃除の際にも見逃されてきた場所だったのだろう。
だから、そのまま残されたのかも知れない。

でも私にはそれを、結夏さんの執念だと感じた。

是が非でも、愛する人との間に出来た胎児の命を奪った人を確定できるだけの物を残しておきたかったのだと思った。


でもそれによって、計画的犯行の可能性だったことが浮き彫りにされたのだった。

スキンを用意して後を付けた行為は、そう言うことらしい。




 孔明さんのお兄さんが逮捕され、事情聴取が始まろうとしていた。


孔明さんのお兄さんは罪を認めたようだ。


信じられないことだけど、結夏さんを襲ったのはやはり隼の親友松田孔明のお兄さんだったのだ。


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