大好きな君へ。
 一応、ことわりの電話を入れた。


「格安の日帰り入浴も出来るらしいよ」


「混浴じゃないんでしょう?」

その発言にドキンとした。


期日は七月三十日から、八月三日までだ。

下着などは隣のスーパーで購入した。

ジャージに短パンも一通り準備してから朝一でテニスコートを目指した。




 「基本は走り込みとウォーミングアップだ」

やっと集合した生徒の前で一席ぶった後で、僕は率先して柔軟体操を始めた。


「二人一組になって!」
部長が声を掛けた。


「いや、それは止めておこう。パートナーストレッチングプログラムはユニフォームが汚れるから朝練には向かないよ」

僕は知ったかぶりした。


パートナーストレッチングプログラムとは二人一組になってやる所謂柔軟体操のことだ。


「みんな知っていると思うけど、スポーツ選手は縁起を担ぐ。土が着くって相撲から発祥した言葉がある。これは敗けを意味するんだ。だから試合前の柔軟体操では、土の上には座らなくなったんだよ」

実はこれはコーチからの受け売りだったのだ。

でもそれが妙に的を得ていてらしく、セルフストレッチングプログラムをすることに決まった。


太ももの表側は踵をお尻に付けるように曲げる。

内側は前屈みになり掌で膝を包むように。

腰は、そのまま掌で足首を掴む。

腰の外側は上に伸ばした手を繋ぎ体を横に倒す。

胸は両手を後ろで繋ぎお尻の下に移動させる。

後頭部で両手を組み、胸を反らす。

肩は手を伸ばし頭を向ける。

これを全員でやってもらうことにした。


「これをずっと続行してほしい。まずは体作りを基本にしよう」

僕は締めの言葉を言うと、全員が納得したように頷いた。




 初めにやるのはランだ。
簡単に筋肉をほぐした後でグラウンドを走る。
午後のロードより軽く全員参加が基本だった。

その後ウォーミングアップしてからラダートレーニング。

ラダーとは縄ばしごの意味で、足下に置いて反復跳びで瞬発力を鍛えることが出来るのだ。

でも僕はもっと簡素化した。

ただ線を書いたのだ。

物を置いて運動した時の躓き事故を無くすためだ。
それにこの方法だと何処でも出来るんだ。


僕の基礎体力と応用力は、それらにより生み出されたものだったのだ。


きつい坂を自転車で通うことも出来ないけど、これでも身体能力は高かったのだった。




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