大好きな君へ。
 「愛した人が行方不明になっているのに、代理母として妹の子供を産んだんだよ。おばさんはお袋のことを許せなかったようだ。それが僕と一緒に帰らなくなった理由だよ。でも優香は自分のせいだと思い込んだんだ。それに……連れて帰っても公園で遊ばせる訳にもいかないしね」


「イヤでもブランコの一件を思い出すか? 優香もお前も痛い人生送ってきたな」


「今度優香に話すよ。お袋が記者会見を開いてくれて何の障害もなくなったから」


「ああ、そうしてやってくれ。優香きっと喜ぶぞ。ところでそのニューヨークにいる母親だけど、なんで子供が産めないんだ?」


「普通、そんなこと聞くか? 母って言うより、女性なんだよ」

そう言いながらも、頭の中では整理していた。


「原因はダイエットだそうだ」


「ダイエット!?」


「その原因を作ったのは自分だと、お袋だと思っているようだ。母は週刊誌のネタにされたんだよ。【売り出し中の女優の妹はおデブちゃん】って。母は元々ぽっちゃりで、可愛い子供だったそうだ」


「その週刊誌の記事を読んでダイエットを始めた訳か?」


「乙女心を傷付けられてな。少し痩せたら、今度はヤセ過ぎだって叩かれて……どうしょうもなくなった母は過食になってリバウンドしたんだ。そしたら又太り過ぎだと……そんなこと繰り返している内に子供が出来難い体になったそうだよ。だからお袋は自分のせいだと思い込んだんだよ」


「それが、代理母ってことにした理由か? 皆苦しんでいるんだな。家の兄貴だって……」


「翔に合わせてやりたいな。あれっ、でも何でお前は体験学習の時に一緒にいられたんだ」


「俺はボランティアだ」


「ボランティア?」


「なんて嘘。兄貴には悪いけど翔のママから連絡があって、急に行けなくなったから代わりに行ってくれってね」


「暇していたのは、孔明だけか……」


「ま、そんなとこだ。翔は俺になついていたから思い出したようだ。でも勇気がいることだと思うよ」


「翔のママにしてみれば一世一代の決断かも知れないね」


「だから、兄貴には絶対に言えないんだ」


「ヤキモチやくか?」


「ああ。どうしても仕事優先になるらしい。翔を養うためには仕方ないって。会社から睨まれる訳にはいかないんだって」


「辛いな翔のママも」


「翔も兄貴も……皆幸せになってもらいたいんだけど」

孔明は唇を噛んだ。




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