終わらない七月九日
まずは自分の左手にはめてある腕時計を見た。
竜頭は出ていない。引っ張ってみようか?いや…やめておこう。これを押すと、時間が戻ってしまう気がする。
だから飯沼のときも、あのタクシーのときも…運転手が腕時計に触れていたけど、そのときもこれを押したんだろう…。
でも何で?見た目は極普通な時計。何故時が戻るのか分からない…。
そのとき目の前に影が落ちた。

「光ちゃん、ちょっと良いかな?」

目線を上げると、前には同じクラスの冨田まこが腕を組ながら立っていた。冨田はお嬢様風な出で立ちで、いつも両脇に二人の取り巻きを連れている。

「ナツ君について聞きたいことがたるんだけど。」

クラス全員が知っているが、冨田はナツが好きだ。告白はしてないが、しょっちゅうにナツに話しかけては、それとなくアピールしている。

「うん、大丈夫だけど…。」

「単刀直入に聞くけど、光ちゃんってナツ君と付き合ってるの?」

「え?」

「いつもナツ君と一緒にるから気になってたんだけど。」

冨田は机に手をつき前のめりになった。そして両脇の二人も一歩前へ出てくる。

「えーと、付き合ってないけど…。」

そんな状況に私は、しどろもどろになってしまった。

「ふぅん。じゃあ私がナツ君に告白しても良いってことだよね?」

「うん…まぁ別に…。」

確かに私とナツは付き合ってない。でも何だか複雑だ。

「ナツ君今校庭だよね?」

話を聞いていたのか。

「告白するの?」

「うん!ちなみに私とナツ君がくっついても、ナツ君とは仲良くしてあげてね?」

冨田はニコッと私に微笑むと、取り巻きを連れて教室から出ていった。
ナツの気持ちは分からないが、冨田は何故こんなにも自信があるのだろうか。それとも私が知らないだけで、二人はいつの間にか…?
いや、それより今は腕時計について考えないといけない…けどだめだ。ナツのことが気になってしまう。仕方がないので少し間を置いてから、私は校庭に向かうことにした。


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