七色マーブル【短編集】
【カーラの真実】


教授は1人、ほうと長く重いため息をついた。


「私達は前世か何かで繋がっている」


この言葉が、ドラキュラに打たれた木の杭が如く、彼の胸に酷く突き刺さっていた。


実はカーラは、17年前にこの病院で生まれた。と言ってもこの事実を知る者は教授只1人である。


カーラは前世、彼の姉だった。


と言っても、両親の離婚により7歳の時に生き別れたので、思い出と呼べるモノは多くはなかった…


だがそれでも、優しかった姉を心の支えとして彼は生きてきた。会いたい想いはつのる一方だったが術は無く、諦めからいつしか記憶の片隅へ追いやられてさえいた。


しかし、運命の歯車は悪戯に噛み合い始める。


彼は偶然、30年の月日を経て自らの勤務する病棟で姉との再会を果たす事になった。しかし時既に遅し、カーラは彼を認識できる状態には無かった。


トラックとの正面衝突事故。カーラの一家を乗せた車はペチャンコになり、唯一生き残ったカーラも植物状態になっていた。


こんな残酷な事があっていいものか!どうしてもっと早く…やっと、やっと再会できた姉だというのに…彼は運命を憎み、恨んだ。



そして刃向かった。


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