王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

輝くはちみつ色の髪に魅力的な翡翠色の瞳をもち、透き通るように白い肌をしているウェンディは、職人が丹精込めて作った人形のようだ。

しかし、彼女が見せる表情は素直で豊かなもので、ウィルフレッドの思うように簡単に頬を染めるのが可愛らしい。


その反応は全て、計算し尽くされたものではなく、目の前のウィルフレッドを映して響くまっすぐなものだとわかるから、彼を夢中にさせていく。


(もっともっと、俺を見てくれる彼女を見ていたい)


ウィルフレッドは握る手に少し力を込めて、ウェンディの手をしっかり繋ぎ止めると、大きな瞳を輝かせる彼女を薔薇園に連れ出すべく歩き出す。

数歩進んだところで、ふと思い出したように振り返った。


そこには、なぜか頬を染めてぽかんとふたりを見上げる乳兄妹と、呆れ顔の従兄弟が座っている。


「エリーとキットは何度も見たけど、一緒にどう? 今夜は月がキレイだよ」


ついでのように誘われたふたりは顔を見合わせ、肩をくすめたキットが先に立ち上がった。

ウィルフレッドが他の誰かに夢中になってエリナを別の男に預けるなど、前代未聞だ。
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