王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
瑛莉菜はこの作品の作者で、今やレーベルを代表する売れっ子作家となった、やよいはるの担当編集者なのだ。
増刷に次ぐ増刷、そしてアニメ化まで決定した今だからこそ、次なる売れる作品を書いてもらわないと困る。
いや、書かせる!
「この『結婚しナイト!』がヒットした今、先生に書いてもらわないと困るんです! 編集部も期待してます!」
「えー、でも俺疲れた。3年も書いたんだよ、もう書けない。宇野(うの)ちゃん、お休みちょーだい」
瑛莉菜の目の前にいる売れっ子作家・やよいはるは、しなを作ってウィンク付きで"お休み"を強請る。
「ダメです! 絶対ダメ!」
「むりむりむり〜! だって俺、おっさんだもん! もう35歳だもん! 休まないと死ぬし、乙女の恋愛なんてもう書けない!」
35歳のおっさんのくせに駄々をこねるな!と言いたいのを必死に堪えて、瑛莉菜は痛むこめかみを押さえた。
ミエル文庫の人気作家・やよいはるといえば、乙女心をキュンとさせるかっこいいヒーローと、女子なら一度は憧れるようなロマンチックなストーリー構成でファンを獲得し続けている。
そのやよいはること竜田弥生(たつたやよい)が、実は35歳独身の男性だということは、トップシークレットだった。