王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~



* * *



「んにゃろう、さっきから距離がちけーんだよ」


夕暮れの中庭でベンチに座って仲良く談笑するふたりを見て、王太子らしからぬ言葉遣いで吐き捨てたのはもちろんキットだ。

エリナを縛り付けたいわけじゃない。

彼女が本当に危険になるまでやりたいようにやらせると誓ったキットは、エリナに言われればやはりランバートとふたりきりになるのを止められなかった。


結局のところ、弱いのは惚れたほうだ。


しかしそろそろ本気で何か策を見つけないとまずいし、エリナとランバートを本当にふたりきりで放っておけるわけもなく、こうして少し離れたところから茂みに隠れてふたりの様子を監視しているわけである。


(つーかエリナもエリナで、そんなふうに笑ってんじゃねーよ)


ランバートが不穏な動きを見せればすぐに飛び出していくつもりだし、もしエリナにキスなんか強要したらぶん殴ってやる。


双眸の奥に青い炎をメラメラと燃やしながら庭園の茂みにうずくまるその姿は、国民や良家の令嬢たちには絶対に見せられない。

キットはまったく気にしないのだが、せっかく見た目だけは王子然としているのに印象がガタ落ちだと、国王に怒られるからだ。
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