厄介なkissを、きみと
それから数日後。
翔平に駅まで送ってもらった日から数日後の今日。
私は再び、翔平が運転する車の助手席に座っていた。
「ふわぁ…」
ハンドルを片手に、口元に手をおいた翔平があくびをした。
「大きなあくび。お疲れ…なの?」
「うーん?べつに」
「……べつに、って」
それだけの返事しかもらえなかった私は、ふぅっと息を吐き出して、視線を翔平からワイパーに移す。
規則正しく動くワイパーが、フロントガラスに打ちつける雨を払拭する。
私はその動きを眺めながら、とある疑問を口にした。
「あくびってさ、うつるよね」
翔平からは、そうだね、なんて言葉も、うんうん、なんて相槌も返ってはこなかったけれど、私は構わず話し続けた。
「なんでだろう、ね?眠たくないと思ってて、も…、あくび、う……ふぁぁぁ」
「……でっかい口」
「………」
翔平のあくびが、うつってしまった。