厄介なkissを、きみと
「はい、到着」
「あ、うん。ありがとう」
蒼井さんの話をしていたら、あっという間に着いてしまった。
「すみません。助かりました」
と、かしこまってお礼を言うと、翔平も負けじと、
「いえいえ。お役に立てて、なによりです」
と言った。
「ふふっ」
「ふっ」
フロントガラスを叩く雨は、車に乗り込んだときよりも激しくなっていた。
私たちの漏らした息も、すぐに消し去ってしまうほど。
「明日も、雨かなぁ」
「“明日”じゃなくて、“今日”だけどね」
「………こまかいオトコ」
ジロリと睨まれたにもかかわらず、翔平は笑っている。
………。
………なんだろう。
この前とは、違う。
この前の朝と。
夜だからだろうか。
雨、だからだろうか。
隣の翔平が、なんだか。
なんだか、………。