厄介なkissを、きみと
その先の言葉を探すのは、やめておこう。
直感的にそう思った。
「あ…。えっと……」
シートベルトを外し、膝に乗せていたバッグを抱えこんだ私は、ハンドルに掛けられた翔平の手に視線を置いたまま、
「ありがとう。おやすみ」
そう言った。
翔平の顔は、見ることができなかった。
真正面で捕らえてしまった笑顔。
「そういうの、悪くない」と言って見せた柔らかな表情。
またそれを目にしてしまったら、その先の言葉を見つけてしまうと思ったから。
「翔平が、なんだか……」って。
その先の、言葉を。