厄介なkissを、きみと
「い、いいよ…」
と断ったものの、
「いいから。早く乗れよ」
と、翔平の左手が助手席にのせられた。
かたくなに拒む理由も見つけられず、
「……じゃあ」
と、お言葉に甘えて送ってもらうことにした。
……のだけれど。
「なにしてんの?」
一向に車に乗り込もうとしない私を見て眉をひそめる。
「え…?あ……」
正直、どうしたらいいのか、わからなかった。
迷ってしまった。
前か、後ろか。
「助手席、…乗っていいの?」
なんてマヌケな質問だろう。
自分でもそう思ったのだから、翔平も思ったに違いない。
「オレ、タクシーのおっさんじゃないし」
そう言ってケラケラと笑った。