降り注ぐのは、君への手紙
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 何不自由なく大きくなった、というと大抵の人は眉をひそめる。
返答は「そう、良かったね」だ。とても本当にそう思っているとは思えない口調で。

もちろん、私は私なりに傷ついたことはあった。
だけど、そんなこと誰にでも起こることだと思うから敢えて取り上げないだけだ。

両親が健在で、学校だって順調に進学して、友達もそれなりにはいる。
そこには私の努力とかが根底にあるけれど、それは敢えて口にだすことではないと思う。

だから、私は「何不自由がなかった」のだ。


入学した大学で仲良くなった女の子にそう言ったら、ひどく憤慨された。


「私なんてね、大変だったんだから」


私立だったらエスカレートで上がれたかもしれないのに、親にお金が無いから公立高校に入って、受験の時に男に振られて、結局一浪して、やっと入学できたんだよって。

本当にお金が無い家なら、多分大学へは進学できない。
彼氏に振られたのは可哀想だけれど、大抵の場合お別れというのは二人の共同責任だと思う。

それに私だって公立高校からの受験組だ。

不満ばかり言う友達に、心のなかでは反論ばかりだったけれど、私はすべてを笑顔で隠した。


「そう。大変だったね。可哀想」


彼女は変な顔をして私を見た。


何が気に入らなかったのかな。

“可哀想”って言葉かしら。
でもね、同情してほしいからそんなことを言っているようにしか思えなかったの。

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