泣きたい夜には…~Hitomi~



「ちゃんと野菜も食べるんだよ」


「あぁ」


「風邪ひいたら病院行くんだよ」


「わかってる」


搭乗時間が近づくにつれ、会話が途切れ途切れになってくる。


だから見送りはいらないって言ったのに。


『……航空3便シカゴ行きのお客様は只今より搭乗を開始します。搭乗ゲートにお進みください』


搭乗案内のアナウンスが入った。


「行かなきゃ」


立ち上がり、バッグを手にした。


「元気でな」


慎吾の寂しそうな笑みに、


あぁ、これで2年も慎吾と会えなくなるんだ。


そう思うと、胸が締めつけられ、


「うぅっ、慎吾っ!」


涙が溢れてきた。


「ひとみ?」


困惑した表情で私を見る慎吾。


通りすがりにチラチラ見ていく人もいる。


「やっぱり行きたくない。慎吾といるぅー!」


本当に私って、どこまで面倒くさい女なんだろう。



.

< 214 / 286 >

この作品をシェア

pagetop