泣きたい夜には…~Hitomi~



「こんにちは」


背後で聞き覚えのある男性の声に振り返ると、今の今までふて腐れていた小野塚先生の表情がぱぁっと明るくなって、


「あらぁ、成瀬ちゃん、いらっしゃい!!!!今日はどうしたの?」


いつもより3オクターブは高いダミ声を上げて、目にも留まらぬ早さで受付にいる慎吾の元へと向かう。


「上杉教授と治験の件で11時にお約束をしていたのですが、教授室にいらっしゃらなかったものでこちらにいらっしゃるのではと思い、お伺いしたのですが」


MRモードの慎吾は今日もスーツ姿と爽やかな営業スマイルを見事に決めた。


オォォッ!
今までそこそこのイケメンにしか見えなかった慎吾が超イケメンに見える。


ほら、通りすがりのナースの目が一瞬でハートマークに変わった。


ふーん、慎吾って意外とモテるんだ。


そう思ったら胸の奥がツキンと痛む。



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