【完】キミと生きた証
「こんなにモテるって・・知らなかった。」


あたしが呟くと瞬がちらりとこっちを見た。



「今日は・・試合中にかっこつけたからな。」



手で腕をこすってたあたしを見て、瞬が長袖の体操着をかけてくれた。



その距離はすごく近くて。


耳元でささやく。



「・・・ちとせが見てるから。」



あたしが目を見開いて真っ赤な顔で瞬をみつめると、


瞬はふっと笑ってあたしから離れた。




・・くやしいなぁ。



あたしだって瞬をもっと、このくらい、どきどきさせたいのに・・・。




「はーい、お二人さん、いちゃつかない。瞬さっきから下で特進科のやつらが呼んでるぞ。」



「まじで?またミーティングか?あいつらガチだな・・。」



瞬が立ち上がって、体操着を返そうとするあたしの手をとめた。



「それ、持っといて。」



瞬がギャラリーをおりていく。


その階段でも女の子たちに話しかけられてる声が聞こえる。


でも瞬の声は聞こえてこない。



「瞬くん女子のことみんな無視してるよね?」


「あいつはいつもあんなんだよ。もったいねえよなぁ。」


「ちーちゃん以外にへらへらしてたらぶっとばすけどね。」


「ほんと仁奈子ちゃん、ちぃちゃんのこと好きだよな。身辺調査してくるし」


「しっ!黙って!」


一馬くんと仁奈ちゃんは何かこそこそ話してる。





そんな時だった。



「あの。」



セーラー服を着た、背の高い綺麗な女の子があたしに声をかけた。



「は・・はい。」



思わず息をのむほどの美人さん・・。



セーラー服の胸当ての部分が開いてて、目のやり場に困るほどセクシー。



こんなセーラー服の着方・・うちの高校じゃなくて、北工の子だろうな。



つやのある長い黒髪、前髪センター分けなんて、美人しかできない髪型だよ。憧れる!



って見惚れていたら、



「瞬くんの彼女なんですか?」


って落ち着いた声。


長い髪を耳にかけて、その長い指先にはヌーディピンクのネイルが艶めく。



「あ・・・はい。」


あたしが頷くと、「そうですか」って呟いて、あたしから離れた。




あの子、色気すごかった・・・。



色気のいの字も見当たらないあたしは、とりあえず両手をみつめてみた。




「イズミ!どこ行ってたの?」


「ごめんごめん。」



その子は友達と合流して、ギャラリーから降りていく。



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