【完】キミと生きた証
前側半分の電気が消され、プロジェクターが映す文字列を追った。



「なにこのパワポ?英語ばっか・・・。よめる?」


「進学校のやつが読めねえのかよ。」


「いまさら高校なんか関係ないでしょ。」


「黙って聞いとけ。」



仁奈子は文句たれるのをやめて、発表を聞き入る。



心移植について、術式や経過なんかを発表しているこの教授は、日本の南の方にある大学病院の教授だ。



興味深い話ってわけでもなかった。


昔の手術から順に経過をたどっていくだけ。ただの報告のようで、真新しいことは些細な取り組みだけだったから。



『次に、10代女性の・・移植についてですが・・・―――』




その声に伏せてた頭を持ち上げた。



・・・10代、女性?



心臓がばくばく音を立てた。



この女性が移植手術を受けたのが、10代のころだ。現在・・・20代と記述がある。



・・・経過をたどっても、ちとせの入院時期とほぼかぶる。



ちとせの病名も詳しくはわからなかったけど、予測するところ、この患者とほとんど同じだ。



プロジェクターに映るのは、長ったらしい英語とグラフと数値の羅列。



術後の予後は・・・あまりよくない、けど・・。



『続いて同じように、40代男性ですが・・・―――』



「あ・・。」


話もプロジェクターの映像も、次に移った。




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