運命の人
あれから実樹に散々聞かれたが答えは出なかった。
無意識に発したわたしの言葉。
なんだったのかな?
辺りはすっかり暗くなっていて、駅への道は街灯で照らされている。
帰り道を急ぐ人に流されながら私はバス停へ向かった。
怪我の前は自転車だったが、自転車はまだ無理かな。
少し痛む足をさすりながら歩く。
「あ…」
バスは行ってしまった。
1時間に一本の貴重なバス。
もう7時なのに。
わたしは駅の近くの雑貨屋さんで時間を潰すことにした。

同級生の間で流行っているスポーツのキーホルダー。
自分の部活に合ったものを持ったり、同じ部活でお揃いにしたり。
わたしも陸上のキーホルダーがほしいなと思っていた。
陸上部はスパイクというシンプルなもの。
でも色は豊富だった。
わたしの目にふと飛び込んだのは、サッカー部のキーホルダー。
小さい青色のユニフォームとさらに小さいサッカーボール。
何故かわからないけどわたしはそれに惹かれた。
これを渡したい人がいる。
《俺、左足を手術したことあるんだ》
綾野の言葉を思い出した。
わたしは彼を応援したい。
わたしに元気をわけてくれる人。
守ってくれる人。
彼にこれでお礼しよう。
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