初めての恋はあなたと。番外編
「嫌がる相手に無理やりは良くないと思うが」


聞こえてきたのは大好きなあの人の声。
ここにはいないはずの、あの人の声。

坂井さんが私から離れたと同時に声のする方を見ると、不機嫌な顔をして腕組みをした和也さんが立っていた。

…嘘でしょ?
何でここに和也さんがいるの?


「関係のない方に言われたくありませんね」

「関係がなければわざわざ言わない」


誰が見ても分かるぐらい負のオーラを醸し出す和也さん。

坂井さんはしばらく黙って軽く舌打ちをして去って行った。

その瞬間、安心したのかふっと体の力が抜けて床に座り込んでしまった。


「千夏!」


滅多に見ない、焦った表情の和也さんが駆け寄ってきて、私の目線に合わせるようにしゃがみ込んだ。

私は思わず目の前にいる和也さんに抱きついてしまった。


「…千夏?」

「ごめんなさい…わ、私、そのっ…」


抱きついた瞬間、言葉にならないぐらいの安心感に襲われ、和也さんの腕の中で泣き出してしまった。

和也さんがいるのに、合コンに行ってごめんなさいという意味ではない。
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