みんな仲良いよね、そうゆーこと。

「……」

「壁ドンの胸キュン様、但し書きはイケメンとして!」

「…驚いた。領収書の書き方なんて知ってたのか」

「相手がイケメンだったら、キュンてしてしまったら、それでもそこから逃れるには…そんな想定で実践演習をするつもりだった。でももし相手がイケメンじゃなかったら…?地味で何の取り柄もないよく言ってフツメン、でも正直残念系男子だったら…?その穴をつくのはむしろ当然の事!」

「はぁ?…あぁ、穴をつく実践だったんだっけこれ。てか完全に後半俺の事だよな?恐ろしい予感しかしないんだけど」

「日常に潜む危険ってあるよね」

「やっぱり危険なのかよ!つーか結局その穴って何?」

「あ、聞きたい?」

「……いや、」

「そんなに聞きたい?」

「……」

「まぁ特に水森なんかは聞いといた方が良いかもね。そしたら壁ドンしようなんて過ちを犯さないで済むからね。水森が壁ドンなんて双方にとって何の利益も生まないからね」

「そうだな。おまえに壁ドンするくらい無利益だな」

「壁ドンの穴…それはふところ」

「?」

「懐がガラ空きなのだ。主に鳩尾」

「……」

「ターゲットを目の前にして急所をガラ空きにするなんてなんたる愚行!片手ならまだしも両手など言語道断!イケメンになら次の一手を考える余地を与えてやらなくもないにしても、もし水森にされたらなんて考えただけでもう…速攻無意識に本能でイケる。グーでもいいけどここはピンポイントに鳩尾目掛けて三本指での最大の突きをかましてやる」

「……」

「やっぱ大事な所は守らないと。すっからかんの空間は危険だよ?だってキュンさせられなかったら?イケメンじゃなかったら?そんな危ない道渡るくらいならもう抱きしめてしまえ!密着すればその心配は無し!まぁ自分がイケメンだとしてもいつ乙女の目が覚めてその技が効かなくなるかも分かんない訳だしさ、いつかのためにもそこは油断してたらダメだと思いますね。日々反撃に備えるべきだしむしろ備えてるものだとあたしは思っている」

「……」

「それに乙女の皆さんも常にこれを頭にいれとくべきだとあたしは思います。壁ドンされて胸キュンしない事もあります。それに胸キュンしたと錯覚しているパターンもあります。その彼は本当に素敵な人ですか?ただ雰囲気に酔ってるだけじゃないですか?お互いにこのパターンはこうしないと…と思ってる節ありませんか?」

「……」

「そんな時、相手の懐に気づける自分になりましょう。そこ、ガラ空きですよ。今なら確実にヤれます」

「……」

「あー…でももし水森にされたとして、そしたら水森が危険を察して密着してきたとしたら…あぁ、そんなの耐えられない。そしたら次あたしが狙うのは足元…いや、両の足の間が狙い目…」

「もういいよ、壁ドンしたら俺の身が危ない事は十分理解した」




藤野さん的壁ドン講座


いつにも増して無茶苦茶だ。ぶち壊してごめんなさいと、アイツは世の中の壁ドンに纏わる人全員に土下座するべき。もちろん俺も含めてな。

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