佐々倉のカノジョ。

財布をソファに放り投げて、玄関に向かう。

その途中で璃乃が走ってきて、

「でもたぶん、この家の裏の公園にいるから大丈夫…」

「聞きたいことあるからいいんだよ」


今日は、忙しい。

かつて俺がこんなに能動的になったことがあっただろうか。


「…」

璃乃の言う通り、裏の公園にソイツはいた。

ジャングルジム…、だっけか、それに器用に寝転がっていた。


「おい」

びくっと腕が動き、こちらに視線を向ける。

「なんだよ、来んな」


面倒なのは嫌いだ。

俺は単刀直入に言った。



「お前、璃乃のこと好きなの?」


「ばっ、かじゃねぇの…」


……まじかよ。

絶対好きじゃんその顔。

「お前…、姉弟だぞ……?」

「父親ちげーし」

なにその発言。
好きなの認めたも同然じゃね?


どうやら大空もそれに気づいたらしく、起き上がると頭をガシガシっとして、俺に言った。


「姉弟だからなんだよ。血は繋がってねぇ。それにもし好きじゃなくたって、お前みたいなやつには渡さねぇ」


「ようするに結局、姉貴が心配なんだよな?」

少し笑いながら言うと、大空はジャングルジムから飛び降りて真っ赤な顔で近づいてきた。


「うっせぇ!!お前には渡さねーからな!!」

ぐいっと襟を引かれ、至近距離でメンチ切られる。

「っつか、別に俺、アイツのことなんとも思ってねぇし、ははっ…」

大空がマジすぎて笑える……っ。

「なんだし、はぁ、もう疲れた」

大空は襟から手をはずすと、脱力したように言った。


「俺も笑いすぎて疲れた」

「ふざけんな、くそっ…」


最初はムカつくやつだと思ったけど、案外面白いやつじゃん。


だけどな、1個嘘ついた。


璃乃のこと、なんとも思ってないなんて、嘘だ。


「ほら、帰るぞ。璃乃の手料理が待ってるからな」


「あーっ、なんでお前なんかにバレちまったんだ、ったくー!」


< 18 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop