不機嫌なアルバトロス
「良かった」


安堵したようにふわりと微笑んで(ただ笑ったんじゃないの、ほほえみなの)、彼はそのまましゃがみこみ、散らばった書類を拾う。



「あ、す、すみません」



心の準備なしで見せられた笑顔にドキドキしながら、自分も拾う。


よく見たら私のじゃないの。


ぶつかった時にバッグを手放してしまったらしい。


会社で使う書類が散乱している。



「はい、どうぞ」


テキパキと素早く集めて、彼はバッグと一緒に私に差し出した。



「あ、あありがとうございます」


終始どもりっぱなしの私。


ぺこぺことお辞儀して受け取ると、バッグの中のファイルに仕舞った。
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