不機嫌なアルバトロス
「痛いところ、ないですか?」
彼が悪いわけでは決してないのに(お互いの不注意だから)、交通事故を起こしちゃった人みたいにまた気遣いの言葉をくれた。
「だ…だいじょうぶです。ありがとうございます」
本当は腰がずきずきとしたけれど、別に言ったところで何があるわけでもないし、彼にこれ以上迷惑を掛けたくなかったので言わないことにする。
更に言えば、咄嗟についた手の平も痛い。
「そうですか、なら良いのですが。では、急ぎますので、失礼します。」
「あ、、、、はい。」
軽く会釈してあっさり彼は駅の方へと歩いて行く。
その後ろ姿をついつい目で追いつつ、がっかりする。
呆気無い。
ほんと、呆気無い。
こんなのが運命の出逢い、とかだったら笑えるけど。
現実にそんなことはないって。
頭ではよくわかってるけど。
でもほんのちょっと。
ちょっとだけ。
この先の進展があったら、なんて心の隅で期待した自分。
どこまで馬鹿なんだか。
ほんと、アホウドリだよ。