不機嫌なアルバトロス
ぱんぱんと頬を叩いて、気合を入れる。


ロッカールームには誰も居なくて、ちょっと安心する。


制服に着替えて鏡で身だしなみを確認した。



「!」



―あぁ、駄目だ。前途多難だ。



少しだけ取れてしまった口紅を見て、


私の胸は容易(たやす)く跳ねる。


顔が真っ赤になる。


詐欺師の彼の温度が甦ってしまう。


あんなのは、ただの挨拶にしか、彼は思っていないだろうに。


差し出された紙袋を受け取る余裕もなかったことに、今更気づく辺り、つくづく私は馬鹿だ。
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