不機嫌なアルバトロス
中堀さんは、私の疑問を無視して、どんどんと注文を付けていく。



《何があっても、声を掛けるのを躊躇ったり、素通りしたらいけないよ?じゃ、よろしくねー》



「だからっ、どうっ」



私は信じられない思いで携帯の画面を見つめる。


もう誰とも繋がっていない電話。



「…質問に答えろっての」



私は苦々しく呟いて、ゆっくりと携帯を閉じた。



溜め息をひとつ、吐いて、私は歩き出す。


こんな風に、一方的な彼に本心を聞き出すのはきっと難しい。


真っ直ぐに好きだと伝えたって、はぐらかされるか、冷たくあしらわれるか、笑い飛ばされるか、無視されるかのどれかだ。


ましてや、今まで一度も人を好きになったことがないと豪語する男だ。


万に一つの可能性もない。


だから、気持ちには蓋をする。


この変な関係が終わりを告げて、時間が流れれば、少しは風化するだろう。


また違う誰かを好きになって、その内、あぁこんな人もいたなぁなんて思い出になる筈。
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