不機嫌なアルバトロス
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「あぁーら、お身体のお加減はいかがぁ?」



最悪だ。


会社について着替えを済ませ、更衣室から出た所で、お局に出くわした。



「けほっけほっ…ご迷惑、お掛けしました。熱は下がったので、大分良いです。」


会釈して、横を通り抜ける。



椿井さんは、いつにも増して真っ赤な口紅を塗りたくっている。


口裂け女みたい。



「それは良かったわぁ。本当に風邪だったみたいでぇ。お兄様にもご迷惑お掛けしちゃ、だめよぉ」


「え?」



オフィスに歩き出していた足を止めて、私は振り返った。


最初の嫌味は聞き流したが、最後の語句は聞き捨てならない。



「携帯で助けを求めたくせに、掛けなおしても出ないなんて、本当にお兄様大変だったんじゃないかしらねぇ?」



最大限に嫌味を言っているようだが、私にはその意味がわからない。



「…あの、すみません。そこをもう少し詳しく教えていただけます?」



「はあ?」



私の不可解な行動に、椿井さんは眉を顰める。



「えっと…兄は、、ここに来たんですか?」



「あら!お兄様、もしかして貴女に言わなかったの?ほんっとに優しい方なのねぇ」



ツヤツヤ光るグロテスクな唇に軽く掌を当てる彼女。


お願いなので、その手でパソコンのキーボードに触らないでくださいね。と密かに念じた。



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