不機嫌なアルバトロス
隠れ家みたいなお店なのに、結構混雑している。
「ここ、人気あるんですね。知りませんでした。」
かろうじて空いていたカウンター席に案内され、スツールに腰を落ち着けると、私は言った。
「私も詳しくは無いんですが、ご飯は美味しいですよ」
そう言うと、中堀さんはメニューを見せてくれる。
ちょっと…いや、かなり緊張している。
だってこの距離間。
無いに等しい。
カウンターで二人並んで座っているので、肩が触れそうになる。
「これなんかお勧めですよ」
そう言いながら、メニューを指差して説明してくれているんだけど、頭に入らない。
「後は好みなので、ゆっくり選んでください。」
そう言ってやっと中堀さんはメニューから手を放したので、私とも距離が開く。
これでやっと集中して選べるぞ―
と、思った矢先。