不機嫌なアルバトロス
そんな中でやっと苦労して手に入れた鉄面皮。
なのに、駄目だ。
この人に逢ってから調子が狂う。
なんか物事を冷静に考えることができない。
看板も何も無い、全体的に黒っぽい建物の、モダンな扉に手を掛けると、中堀さんはまた時計に目をやる。
―そんなに時間がないのかな。
先程からその仕草に何度も目を奪われるが、そんなに時間がないのなら、別に一緒に無理にランチしなくてもいいのだけどと思う。
中に入ると、当たり前だけど本当に店だった。
落ち着いた感じのレストラン。
外観から見るよりもかなり広い店内は、床がこげ茶色で、反対に家具は白っぽかった。
そのコントラストが洒落ている。
「いらっしゃいませ。二名様でしょうか?」
男性の店員がやってきて、彼の前で恭しくお辞儀した。