不機嫌なアルバトロス
ポタージュも作り終わって、手持ち無沙汰になって、とりあえず風呂に入って出たら、あいつがソファに変な格好で座っていた。



熱出して人ん家で寝込んで、首の体操って…どんだけ馬鹿なの。



しかも、家に帰りますとか。



だから、鍵がないんだって。





『あんたさぁ、もしかして…会社から中央公園まで徒歩できたりした?』



たぶん、いや絶対確実にそうなんだけど、一応確認の為に訊ねた。


案の定櫻田花音の顔には、なんでバレてるんだと書いてある。




やっぱりか。



『ほんっと、馬鹿なんだね』




もうちょっと、楽に色々考えれば近道とかわかっただろうに。



もしかして、この女、不器用なのか?



頭の中で色々考えていると、急に俯いた顔を上げて櫻田花音は俺を睨みつけた。




『さっきから!人のことを馬鹿とか阿呆とか言わないでくださいよっ!どーせ私は馬鹿で阿呆ですよ!その上アホウドリとか言われちゃってますよ!』



突然、喚きたてる。



なんだ?



俺、何のスイッチを押したんだ?


心の中で首を傾げている俺に、さらに櫻田花音は畳み掛ける。




『わっ、私だってねっ、わかってますよ!自分が馬鹿だって事くらいっ。でも仕方ないじゃないですかっ。一人は寂しいんだもん!』




ん?




『…ちょっと待て。何の話?』




話が見えないんですけど。


だけど、俺の質問に答える気配は全くない。


素面なだけに、酔っ払いよりも性質(たち)が悪い。



『阿呆は阿呆なりに頑張って必死に生きてるんですよ!なのにねぇっ』



おいおーい。


この夜更けに勘弁してくれよ。



今度は泣き出したあいつに、俺はお手上げ状態。

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