不機嫌なアルバトロス

会社がすぐ近くで良かった。


入り口が見えてきてほっとする。


いつもは嫌で仕方ないその場所が、今は自分の逃げ帰る避難所に見えるから不思議だ。



「櫻田さん!」


ちょうど会社の真ん前。


昼食を終えてそれぞれ自分の会社に戻る人々が行き交っている広場。


少し大きく名前を呼ばれたと思ったら、後ろから肘を掴まれた。



「急にどうされたんですか?」


追いついた中堀さんが訊ねる。


どうされたんですかじゃないわよ。


私は怒ってんのよ。




「櫻田さん?」



機嫌が悪いの。
< 39 / 477 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop