不機嫌なアルバトロス

何も答えない私を、タカは暫く見つめているようだったが。




「…ごめん。ちょっと、我慢して」




そう言うと、ペットボトルの水を口に含み、私の顔を覗き込む。




そして、そのまま―



「!」



焼けるような喉に、流し込まれた、冷たい水。



ゆっくりと唇を離したタカは、熱を帯びる目で、虚ろな私を見つめた。




「目を、覚ましたら―多分、覚えてないんだろうけど…」



やがて囁くように。



「俺、本気でカノンちゃんが好きだ。好きすぎて―」



ぴったりと近づく距離。




そして。




「どうすればいいのかわからない」



落とされた苦しそうな想いと共に、もう一度触れる唇。



やけにはっきりと、それは私に響いて。


ただでさえ、潤む目から、涙が一粒、零れた。




ココロが、痛い。


ひりひりと、痛い。






私の涙に気付いたタカが、はっとして罰が悪そうに離れる。




「ほんと、、サイテーだ…ごめん」





そう言って、顔を真っ赤にしながら、掌で口を押さえた。





「もう少し、、寝て。俺は、、ちょっと頭冷やしてくる…」





遠退く気配、それから足音。


バタンと閉じる扉の音。




少しも動けないまま。



意識は遠退く。



引っ掻かれたように心が痛むのは何故だろう。



それはたぶん、、きっと。



タカの想いと、自分の想いが似通っているからだ。



どうしようもない、抱えきれない恋心。


だけど、どれも、一方通行で。


報われることはない。




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