不機嫌なアルバトロス
「……人聞きの悪いこと言わないでくれる?崇にチャンスをあげただけ。…でも、その様子だと、何もされてないみたいね。がっかりよ。」



冷ややかな声で、腕組みをしながら葉月は答えた。



「なっ…!どうして…」



言いながらも、言葉に詰まる。


なぜなら、目の前の女の子に自分が何かをしてしまった覚えがないからだ。



私を見下ろす冷たい目に、ぞくっとした。



「…零の傍から消えてくれない?」



少しの沈黙の後、呟かれた言葉は衝撃的だった。



「どういうこと…?」



理解できない要求に首を傾げると、葉月ははぁ、と溜め息を吐く。




「そのままの意味よ。アナタが居ると邪魔なのよ。零は私のものよ。」



「え…?」



その時、ノックの音が響く。




ピタリと止まる会話。




静かに開く扉と、ドアノブの音がして。



「…葉月、、お前そこで何やってんの?いい加減にしなよ。」



諌めるように入ってきたのは、燈真だった。



「別に。謝ってただけよ。」



しゃあしゃあと嘘を言ってのける葉月に、私は眩暈が倍増した気分だ。



「もう出てくわ。…じゃあね…カノンさん。」



燈真とは顔を合わせずに、部屋から出て行った葉月を目で追うと、こちらを見ている燈真と視線が交差する。




「…気分、どう?少しは落ち着いた?」



「あ…はい。。。大分…」



「俺が居ない間に…ごめんね。葉月に任せるんじゃなかったな。」




いつかのように、困った顔で申し訳なさそうに謝る燈真に少しほっとした。



燈真は私の居るスモーキーレッドのソファに近寄り、その肘掛部分に腰掛ける。


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