不機嫌なアルバトロス
タタン・・・タタン・・・


電車のリズムに身を任せながら。




近づいてくる彼と会う場所に、さっきまで抱いていたものとは違う緊張が涌いてくる。




最後、なのかな。


中堀さんと会うのは、これで本当に最後、なのかな。



二週間はあっという間だった。



最初は逃れたくて仕方なかったけれど。



今はもう少し延びないものかと考えている。



私は本当に図々しい女だ。




真っ暗な景色に、金色の髪を思い出す。




憂いを帯びた目と、悪戯っぽく笑う目と。


演技している目と。


本当の目。



優しくない時と、


優しい時。



手首を掴まれた感触。


唇に触れられた数。



私の名前を呼んだ、声。




手すりをぎゅっと握りしめる。



窓に映る自分の姿は、なんて顔をしてるんだろう。



もう、いいや。



会ったらなんて言おう、とか。



どんな顔して会おう、とか。



どう言って引きとめよう、とか。




考えられない。





ただ、会いたい。



また、会いたい。



会って、触れたい。



貴方を、見たい。



その後のことは、その時に考えればいい。



今は。



ただ、貴方に、会いたい。


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