不機嫌なアルバトロス
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「お疲れ」




ロビーの椅子に座って手持ち無沙汰に行き交う人々を見ている私の目の前に、ミルクティーの缶が差し出された。



ドキリとして、それを持つ腕の主を見上げると、当たり前のように中堀さんがそこに居て私を見下ろしている。




「あ、ありがとうございます」




緊張しながらそれを受け取ると熱がじんわりと掌に広がった。




「…よく…わかりましたね…」



隣に腰を下ろした中堀さんが持つ缶コーヒーに、視線を奪われつつ言うと、中堀さんが首を傾げる。




「何が?」



「その…私がミルクティー…」



「あぁ、ガキだから、そーかなって」



「………」



少しくらい、嘘でもいいから優しさが欲しいと思ったり。



同等扱いされない悔しさで唇を噛む。


大体貴方一体幾つなのよ?!


心の中でむっとしながらプルタブに手を掛けた。



でもそんな苛立ちはすぐにしぼんでしまう。



「いただきます」



「おー」





口に広がる甘い味が胸を切なくして。




中堀さんも、隣でコーヒーを飲んでいる。


私はそんな彼をちらっと見る。


中堀さんは前を向いているから、視線は交わらない。





「あの…本当に、、良かったんですか?」




「何が?」





こちらを振り向くこともせずに、中堀さんは訊き返した。





「…志織さん…」




中堀さんが横目でじろっと私を見る。





「…やっぱりなんでもないです…」




無言の圧力に、自分のした失言を後悔する私。




中堀さんはまた視線を前に戻す。




「…それ、飲んだら送ってく。」




小さな溜め息と一緒に、呟かれた言葉に心が貫かれたように感じた。


止まってしまったのではと思うほどに。

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