12月の恋人たち
<12月24日 午後7時>

「優馬くん!凄いよ!今年は童話モチーフのイルミネーションなんだって!あとツリーも!」
「…落ち着けって、舞。」

 落ち着いてなんていられるはずもない。これだけキラキラと光るイルミネーションがどこまでも広がっていて、目が足りない。

「うわっ!」
「ほらな。」

 段差に躓き、舞は盛大に転んだ。優馬が手を差し伸べてくれる。舞はその手に素直に甘えることにした。

「消えたりしねーから、そんなに慌てるな。つーか俺の手を離すんじゃねーよ。」
「はぁい。」

 再びぎゅっと握られた手に、思わず笑みがこぼれる。それを優馬にはばっちり見られていたようだ。

「…何、舞?」
「優馬くんの彼女なんだなーって実感中。」
「イミガワカリマセーン。」
「えぇ!?」
「お前が俺の彼女なのは当たり前だろ。何を今更実感とか言ってるわけ?」
「…だって、優馬くん、モテるんだもん。」
「この顔だからな。」
「…彼女できても、変わんないから。女の子たちのアピールが。」
「それがこのクリスマスシーズン、結構激しかったから拗ねてんの?」
「…うー多分。」
「なんだそれ。可愛さで俺を殺す気か。」

 重なる手に強さが増す。そんな優馬の一つ一つの行動に頬が緩んで仕方がない。大事にされている、好かれていると思えれば思えるほど、気持ちが膨れ上がってくる。

「あ、シンデレラだ!」
「おーシンデレラに見える。」

 今年のイルミネーションのテーマは童話ということで、光で作られたお姫様に王子様、それにツリーまで飾られている。
 舞の好きなシンデレラのエリアにはもちろんガラスの靴やカボチャならぬ光の馬車まである。
< 18 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop