12月の恋人たち
「え、優馬くん、どうしたの?」
「いや、なんでもない。」

 ふと、優馬の視線を感じて舞は優馬に視線を戻した。優馬といえば、舞から少し目を逸らしている。

「ゆーまくん?」
「なんだよ!いきなり顔近付けんな!」
「えぇーなんで怒られるの!?」
「お前がいきなり顔近付けたから!」
「意味わかんない!なんで目、逸らすの!」
「それはっ……たから…。」
「え?」
「多分緩んでたから、顔!」
「緩む…?なんで…?」
「なんでってお前…あーもうバカ…。」
「っ…!」

 ぐいと引き寄せられ、温かい優馬のコートに顔が埋まった。優馬の香りが鼻を刺激して、ドキドキが増していく。

「優馬…くん…?」
「イルミネーションなんかほとんど目に入んない。」
「え、なんで…?イルミネーション、興味ない?」

 そんなことを言われると、舞のほうとしては不安になる。自分ばっかり楽しいのではないか、と。

「…なくはねぇけど、イルミネーションより、お前ばっかり目に入る。で、顔緩む。」
「へっ!?」

 思わぬ角度からの返しに、舞の頬が熱くなる。あれだけ子供みたいにはしゃいでいた姿をずっと見られていたと思うと、恥ずかしさはより増す。

「…ご、ごめん、あたし…はしゃぎすぎ、だよね…。子供みたいに…。」
「なんで謝ってんだよ。可愛すぎたから、普通に。だから顔緩む。」
「へぇっ!?なにそれっ…!」
「子供みたいにすげー笑って、イルミネーションの光、全部顔に受けて、…お前の方がキラキラ光ってたぞ。」
「そ、そんなことないよ!イルミネーションの方が何百倍もキレイで…。」
「…可愛さは、お前の勝ち。」

 ちゅっと額にキスが落ちる。幸い、シンデレラのイルミネーションの周りにはあまりいなかった。

「っ…だめだよ!こういうのは!人がいるのにっ…!」
「デコでだめならこっちはもっとだめじゃねーか。…もうイルミネーション終わり。帰るぞ。」
「えぇー!もうちょっと!」
「じゃあここでキスするけどいいわけ?」
「それはっ…だめ、です。」
「じゃあ帰る。って…!?」

 舞はそっと爪先立ちをし、優馬の頬に唇を寄せた。そっとそこにキスを落とせば、頬の冷たさが唇から直に伝わってくる。

「…お前っ…!」
「これに免じてあと30分だけ!ここにいよう。だめ?」
「…っ~!わかった!行くぞ。」
「やったー!ありがとう、優馬くん!メリークリスマス!」
「メリークリスマス。」

(…こいつ、頭おかしいんじゃないかっつーくらい可愛いんだけど。)

*fin*
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