12月の恋人たち
* * *

<12月24日 午後8時>

「おぉーい起きろ、美森(ミモリ)。」
「ふぇ…?」
「クリスマスイブだっつーのにお前はほんっと寝てばかりだな。課題やるんじゃなかったのかよ。」
「…そう、だった、と思ってた。」
「もういい!外出るぞ、外!」
「え、やだ。」
「は?」
「だって寒い…もん。」

 このぐうたら姫を彼女とする樹(イツキ)は、もはや彼氏というよりはむしろ召使の位置にいる。今日は12月24日だぞと言いたい気持ちをぐっとこらえて、けだるげな彼女を叩き起こす。

「コート。」
「マフラーは?」
「巻いてやるからこっちこい。」
「はぁい。」

 素直なところはぐうたら姫、もとい美森の唯一よいところだと言える。むしろそれしか良いところがない。(と思うと自分が悲しくなるだけだ。)

「よし。」
「ありがと、樹。」

 ふにゃりと笑う、そんな気の抜けた様子さえ可愛いのだからタチが悪い。可愛いと思う自分がどうかしていることも否定はできないが。

「どこ行くの?」
「どこ行きたい?」
「ここ。」
「なんでだよ!ケーキバイキング行くって約束してただろーが!」
「あーそっかぁ。うん、行こう、ケーキバイキング。」
「行くっつってんだろ!おら、行くぞ!」
「はぁい。」

 玄関を出ると、すっとすり寄ってくる。ただ自分で暖を取りたいだけだと知っているが、それでもこうしてすり寄られるのが自分だけだと知っている今、それを無条件で許してしまう自分がどうしたって甘すぎる。
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