12月の恋人たち
「可愛すぎる茉莉花にプレゼント。」
「え?」

 渡されたのはCDだった。透明なケースに入った、白いCD。

「…これ、は…。」
「生まれて初めて録音とかしたし。全然わかんなかったから兄貴に結構手伝ってもらった…からちゃんと聴けると思うけど。」
「えっと…由貴の歌?」
「そう。新曲。茉莉花が一番、俺の歌を好きって言ってくれるから、…喜ぶ、と…思って、ん…だけど…。何かリアクション薄くね?」

 由貴がそっと、茉莉花の顔を覗き込んだ。

「…茉莉花?」
「今すぐ聴きたい!」
「え?」
「我慢できない!今すぐ歌って!」
「ったくしょーがねぇーなー。でも茉莉花ならそんなこと言う気がしてたけど。」

 そういっていつものようにギターを構える由貴。その姿が、茉莉花は一番好きだと自信をもって言える。
 由貴の歌声が張りつめた空気の中によく響く。その歌詞一つ一つが愛おしくて仕方がなくなる。声に魅せられたのは、偶然ではなかった。偶然だけでは弱すぎる。
 歌い終わって、由貴がそっと口を開いた。

「…俺たちさ、いつでも会えるわけでもねーじゃん。」
「…そうね。」

 それは悲しいことだが事実だった。茉莉花への監視の目は依然とさほど変わらない。今日もクラスの友人のところでパーティーということになっている。タイムリミットまであと30分だった。

「…だから、へこたれそうになったらそれ聴いて。」
「…うん。ありがとう。」

 由貴の歌声は茉莉花にとって魔法だ。今の自分が籠に閉じ込められた鳥であることは痛いほど知っている。ただ、その状況を甘んじて受け入れていたいとは思わなくなったのは、茉莉花にとって最大の成長だ。その勇気も、自信も全て由貴の歌声のおかげだ。

「…茉莉花。」
「ん…?」

 顔を上げた先に待っていたのは、あまりにも優しいキスだった。

「…真っ赤。」
「…誰のせいだと思ってるの!?」
「俺。」

 確信犯はにやっと笑う。こういう時は同い年なのに、普段は年上みたいな余裕を感じさせるのがなんだか悔しい。
 そんな確信犯は唇をそっと茉莉花の耳元に寄せた。

「…メリークリスマス、茉莉花。」
「め、りー…クリスマス。」
「耳まで真っ赤。」
「由貴のせい!」
「知ってんよ。」

*fin*
< 7 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop