愛しくて壊しそう
なんだかんだとその日は忙しく、夜も10時を回っていた。

「水織、オレ送ってくよ」

水織の家は、ここから歩いて30分くらいだろうか。
遠くないが、歩くのにはまあまあある。

「夜だしね」
「あ、うん、ありがとうー」

にこっと笑って、水織は頷いた。
いいバイト仲間という立場を、保ってきた1ヶ月間の成果。

恋愛なんてよくわからない、って女だろうから…。急がないで、ゆっくりと行こうと思ってる。
まずはいい友達→兄のような存在→恋人。って感じで…。

…こうやって、女を手に入れるのに策を練ったことなんて、あっただろうか…。
オレは少しため息をついた。

「みーおちゃん、今日達夜が迎えにくるんだよ、それまで待っててくれる?」
優沙…優が水織に言った。
 
18歳の優沙は、専門学校に行きながら、ここに就職している。
融通が利くのは、普通の会社って感じじゃないからだろうな。ぬるくて気楽だ。

達夜め…水織を見に来るつもりだな。
 
「あ、ペンケースないな。スタジオかな」
「わたし持ってくるよー」
「ありがとー」
 
更衣室から出てきた水織は、そのままスタジオに入っていった。
オレは、なんとはなしにスタジオをひょいっと覗き込んで…びくっとした。

まとめて置いてある、スタンドタイプの照明機材が…。
 
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