愛しくて壊しそう
考えるよりも、体が先に動いた。
 
「あぶな…」
い、とまで言っただろうか。

オレは水織を庇って、照明機材の洗礼を受けた…。


…い…痛ってえ…。
つー、っと。頭から血が流れてくるのがわかった。
胸のあたりも激痛が走る。アバラをちょっと痛めたかもしれない。

水織…水織は無事か…。

「ま、まつおかさん? 松岡さん!!」

悲痛な声がした。
よかった…無事だ。
無事だ…ありがとう神様。
馬鹿馬鹿しいが、本当にそう思った。
…なんとなくだが、仏様って思ったほうがよかっただろうか。
家…寺だし…。

「松岡っ!」
優の甲高い声がした。
「影伊っ、おい、生きてるか?」
達夜か…。
 
ガシャガシャと体に圧し掛かっていた照明が避けられた。

「ああ、生きてる…」
ゆっくりと上半身を起こす。
実際、痛いものの、そんなにひどい怪我をしているわけではない、と思う。

見ると、オレを見つめる水織と目が合った。
今にも泣きそうな…心配と自己嫌悪の入り混じった感情が見える。

< 7 / 34 >

この作品をシェア

pagetop