届かぬ声を、君に。
「じゃあ、また明日ねー」
私と優花は、それぞれの家の前で手を振る。
私の家と優花の家は、向かい合わせに建っているから。
私の家は、二階建ての小さな一軒家。
これでも、家族が六人いると少し狭い。
「ただいま」
「おかえり」
リビングのソファに座って、お母さんがテレビを見ていた。
「あ、舞香。お願いがあるんだけど……」
「何?」
「今日、美花のピアノのレッスンがあるんだけど……今から迎えに行ってくれないかしら?」